「命を大切に 命を輝かせて」生きる児童の育成
一宮市立貴船小学校
1 はじめに
本校は、市の中心部に位置する街中の中規模校である。マンション等の集合住宅に住んでいる児童が約3割と多く、保護者も他の地域からの転入が増えてきている。地域的には広い学区であるが、一宮市本町商店街付近の古くからの地域と、若い世代が多数を占める地域があり、子どもたちを取り巻く環境に大きな違いがあるのが特徴的である。そうした多様な価値観をもつ環境の中、本校はキャリア教育を推進することで、自己有用感や自己肯定感を高め、「命を大切に命を輝かせて」生きる児童の育成を図っている。
2 本校のキャリア教育
毎年、計画的に講師を招いて「貴船小 生き方講演会」を開催している。令和4年度は、1学期に元福岡ソフトバンクホークス監督の工藤公康氏、同じく1学期にウルフドックス名古屋の近裕崇氏、3学期には元アトランタ・シドニー競泳オリンピアンの中尾美樹氏を招いた。令和5年度は、1学期に元北京オリンピック女子バレーボール選手の櫻井由香氏、同じく1学期にウルフドックス名古屋の近裕崇氏、そして3学期に、第5回世界身体障害者野球大会日本代表主将の松元剛氏を招いて講演会を開催してきた。
講師の櫻井由香氏との記念写真に納まる貴船っ子
また、毎年3月、卒業を前にした6年生を対象に、自分を大切に育ててくれた貴船という地域への愛着心、母校への愛校心を育てるために「地域の方から学ぶ会」と称して、地元貴船の職業人を招いて講演会を開催している。
どの講演会でも、講師の方々の、経験してきたからこそ言える一言一言は、子どもたちの心にまっすぐ届いてくる。特に、令和6年1月27日に開催した生き方講演会は、参加した児童・保護者・学校関係者からの反響が大きかった。世界身体障害者野球大会で二連覇の立役者として活躍された、地元一宮市出身・在住の、松元剛氏の講演会である。松元氏は、仕事中の感電事故により左腕と右指2本を失ってしまった当時の苦しい胸の内や、家族や仲間に支えられ見失いかけていた大好きだった野球との再会の喜びを、かみしめるように真心込めて語ってくださった。子どもたちも、松元氏の語る言葉に心を傾けて真剣に聞き入った。
万雷の拍手により見送られる講師の松元剛氏
講演会を終えて、参加した子どもたちにどんな言葉が心に残っているか、と聞くと、「『やる』か『やらないか』の時に、どんな時も『やる』を選択してほしい」「どんな時も『感謝』と『支えてくれている仲間』を大切にしてほしい」「元気な貴船小!元気な一宮にしていこう!」という松元さんの言葉が口をついて出てきた。続けて、「自分の弱い心に火をつけてくれた松元さんに感謝します」「何不自由ない自分は考え方が甘かったことに気づきました」と言う子どもたちもいた。キャリア教育を通して、前向きに希望をもって生きていきたいと思う子どもたちの育成ができ、大きな教育効果を感じた講演会であった。
3 おわりに
今後も、キャリア教育を推進していく中で、自分自身の今とこれからの在り方を見つめさせ、将来への夢と希望に向けて前向きに努力する意欲の醸成を図っていきたい。そして、「元気な貴船小!」をこれからも作っていきたい。