「河中ホタルプロジェクト」を通した環境保全教育
岡崎市立河合中学校
1 はじめに
本校は、市の東部の山間部、乙川上流に位置する小規模校である。昭和41年、当時の理科部が中心となり「岡崎ゲンジボタルの人工養殖」活動の取組が始まった。昭和47年に乙川上流の河合地区も「天然記念物岡崎ゲンジボタル発祥地」に追加指定された。岡崎ゲンジボタルは「河合の宝」とされ、岡崎ゲンジボタル河合保存会と河合中学校が一体となって地道な保護活動を続けている。その結果、河合地区の清流でゲンジボタルの飛翔を見ることができるようになった。毎年4月には岡崎市長をお招きして「ゲンジボタル幼虫放流式」を盛大に開催しており、今年で58回目を迎える。
2 河中ホタルプロジェクト
① 自然科学部の取組
ア 人工産卵
自然科学部は、ホタルの交尾活動が活発化する飛翔時期の後半に、学区の河川でオスとメスの親ホタルを採取する。メスは1頭で300から500位の卵を産むため、必要最小限の数を採取し、自作の産卵箱に数匹のメスと若干のオスを入れ、産卵から孵化まで行う。

カワニナの繁殖活動
イ 幼虫の給餌
幼虫を飼育する上で重要になるのが、エサとなるカワニナの確保である。給餌で難しいのは、脱皮を経て大きくなる幼虫の体長に合わせて、大きさの異なるカワニナを与えることである。そのため、校内にあるカワニナプールでカワニナの繁殖活動も行うことになる。特に、幼虫が生まれて間もない夏頃は、カワニナプールから採取したカワニナの中から数ミリの稚貝を選別しなくてはならない。ピンセットでは難しいため、ガラス管を使った専用ピペットで行っており、とても根気のいる作業となる。
② 全校生徒の取組
ア マイホタル活動
ゲンジボタルのことをもっと知り親しんでもらえるよう、教室の廊下に幼虫飼育用の水槽を設置し、秋から春まで各学級で幼虫を飼育している。幼虫の成長をよく観察でき、幼虫がカワニナを食べている姿を見ることもできる。また、幼虫の生態がよく分かり、幼虫への愛着も湧いてくる。各学級で成長させた幼虫の一部は、年度末に3年生が卒業記念事業として河川に放流する。

ホタル愛護看板の設置
イ 看板設置
毎年5月下旬、全校生徒でホタル愛護看板をホタルが飛翔する時期に合わせ、それぞれの家の近くの道路に設置する。この看板には、 「ホタルを見に訪れる人にホタルを大切にしてもらいたい」「多くの人にこの地がホタルの生息地であることや飛翔する時期になったことを知ってもらいたい」という生徒の願いが込められている。
ウ 飛翔調査
5月下旬から7月上旬まで、全校生徒と河合保存会の方が協力してゲンジボタルの飛翔調査を行う。学区の飛翔ポイント20箇所から可能なポイントを選び調査を行う。この調査結果は回覧板でお知らせし、地域の方にホタルの保護活動により関心をもってもらえるようにしている。
3 おわりに
「ホタルを生かすことによって川を生かす 川を生かすことによって人が生きられる」自然保護に対するこの精神が、生徒一人一人に今後も脈々と引き継がれていくことを願って止まない。