地域との交流を通して豊かな心を育てる取組み
-名古屋市立西養護学校-
1 はじめに
本校は、創立39年目を迎える知的障害のある児童生徒を対象とした特別支援学校である。訪問教育部・小学部・中学部・高等部が一体となり、一つの学校になっている。
本校の近くには名古屋駅があり、交通の便にも恵まれ、子どもたちは名古屋市内各区から通っている。当然のことながら、小・中学校のような学区は存在しない。
しかしながら、地域の方々は、本校を学区の学校のように考え、常に温かい支援をしてくださっている。
このような地域の基盤に立って、本校では、地域の方々や、地域の小・中学校との交流を積極的に進め、児童生徒に豊かな心を育てていきたいと考え、取り組んでいる。
2 活動の概要
(1) 地域の方々との交流
餅つき会での交流
本校では、11月と1月に地域の方々を招き、餅つき会を行っている。餅つき会は本年度で6回目を迎え、恒例行事になっている。
当日は、地域の方々が朝早くから調理室で餅米を蒸したり、お湯を沸かしたりして準備をしてくださっている。その後、児童生徒一人一人がきねで餅をつく体験をしている。
餅のつき方を知らない児童生徒は、地域の方々から手を取って丁寧に教えてもらっている。
児童生徒は、このような関わりを体験したことで、餅つき会に来てくださっている地域の米屋さんにいつもあいさ
つをするようになり、地域の方々に会うと笑顔を見せるようにもなってきている。
参加した地域の方々からは、「来年も楽しみにしているよ」という声をたくさんいただいている。
(2) 地域の小学校との交流
遊びでの交流
小学部では、地域の小学校の児童と共に活動する機会を設けることで、生活経験を豊かにしたいと考えている。
地域の小学校の特別支援学級だけでなく、通常学級の2年生や6年生とも交流を行っている。
実際の交流の仕方は、小学校の児童の実態に応じて、次のように行っている。
○ | 特別支援学級の場合は、各学年に1~2人入り、一緒に活動する中で、交流を図る。 |
○ | 2年生の場合は、ペアになる児童を決め、遊びを通して交流を深める。 |
○ | 6年生の場合は、児童自ら企画した遊びを一緒に行い、兄弟関係のような交流を目指す。 |
地域の小学校の児童からは「仲良くなれた。また一緒に遊びたい」といった声が多く聞かれ、本校の児童も笑顔いっぱいであった。
(3)地域の中学校との交流
作業学習での交流
中学部では、地域の中学校の特別支援学級の生徒との交流を通して友達の輪を広げたいと考えている。
まず、中学部での集会の様子を撮影し、「ビデオレター交流」として中学校に送っている。次に、「作業交流会」と
して、紙工や木工など各作業グループに分かれ、中学校の生徒と共に作業学習を行っている。一緒に活動する中で、
助け合ったり、励まし合ったりする様子も見られるようになってきている。
中学校の生徒からは「新しい友達ができてうれしかった」「木工でキーホルダーの作り方を教えてもらってうれしかっ
た」など、交流の成果といえる感想が多く寄せられている。
3 おわりに
心温かな地域に支えられ、本校の児童生徒は伸び伸び活動している。
地域の小・中学校との交流及び共同学習を更に推進し、児童生徒の生活経験や友達の輪を広げ、より豊かな心を育んでいきたい。
(文・写真 矢野 博明)