書道科の新設
-春日井市立小野小学校-
はじめに
道風記念館
校区は、春日井市の南西部に位置し、庄内川がすぐ南を流れている。校名の「小野」は、日本三蹟の1人である小野道風に由来し、昨年、開校120周年を迎えた。
小野道風は、894年(平安時代中期)に現在の春日井市で生まれたと伝えられている。何度も柳に飛びつく蛙を見て、努力を重ねる大切さを知ったとされる。道風は、我が国書道史上、和様を創始確立した人であり、三蹟の先駆けとなった。生誕地と伝えられる松河戸町には、全国的にも数少ない書専門の美術館である道風記念館がある。
県下児童・生徒 席上揮毫(きごう)大会
揮毫(きごう)大会の様子
見出しの大会は、昭和11年、小野道風公遺徳顕彰会が主催して始まった。空襲警報の中でも、伊勢湾台風の年でも、現在まで絶えることなく続き、今年で77回目を迎える書道の大会である。
この書道大会を運営している小野道風公遺徳顕彰会は校区の区長・副区長、PTA、教員、ボランティアで構成され、文字通り学校と地域が一体となって活動している。
県内の小中学校から各学年2人の代表が参加し、学年課題の字句を手本なしで書いていく。持ち時間は25分間で、用紙が2枚だけ配布される。「用意、ドン」で始まるので小野の競書会とも呼ばれている。第1回からの優秀作品は本校で大切に保管され、書道教育の変遷を語る貴重な資料となっている。
毎年、800人ほどの参加者があり、大会当日、校庭は、朝早くから送迎の車で隅から隅まで埋め尽くされる。
書道科の設立
かざぐるまの隊形
本校では、「書のまち春日井 われら小野っ子 めざせ道風」をスローガンにして書写教育に取り組んできている。
平成22年度までは、国語科における書写の授業以外に総合的な学習の時間を利用して、各学年10時間程度の総合書写としての取り組みもしてきた。
昨年度からは、文部科学省より教育課程特例校に指定され、書写から「書道科」としての研究を進めていくことになった。
それまでは、3年生から毛筆を始めていたが、書道科では1年生から始めることにした。45分間の授業で、準備から後片付けまでをしていては、筆を持って書く時間がわずかになってしまう。そこで、全学年で使える書写ルームを作った。床には体育館で使う古いターポリンを敷き、墨をこぼしても床に染み込まない環境を作った。机は風車(かざぐるま)の隊形にしている。硯は真ん中に1つだけ置き、共同で使用する。一人一人の使える場所が広くなり、お互いの作品を見て鑑賞したり、相互批正したりしやすくなっている。
持ち物では、水書板を個人で持たせて練習させている。1・2年生には学校の筆を使わせている。自分の作品を保管しておくためのホルダーとして画用紙や新聞を利用した紙ばさみを作らせている。
このようにして出来上がった作品は、12月の作品展で展示し、保護者にも個人懇談会の折などに鑑賞してもらっている。
また、「校長による特別講義」が伝統的に続いている。どの学年も卒業するまでに一度は、小野道風についての特別講義を聞いて学習することになっており、1年生には、やさしい言葉を選んで説明するようにしている。
おわりに
校長室の耐火金庫の中の席上揮毫(きごう)大会の優秀作品は、戦時中、空襲警報が鳴ったら、担いで持ち出すことになっていたそうである。こうした伝統を大切にして、今後は、書道科の評価などに重点的に取り組んでいきたい。
(文・写真 説田 裕)