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特色ある学校経営

身近につながる、未来へつながる理科・生活科学習

-名古屋市立八熊小学校-

1 はじめに


3年生 黒川での生物調査

 身近な環境や生活体験から生まれた問題を主体的に解決する中で、「科学の知」を獲得するだけでなく、それが身近な自然や自分たちの生活、ひいては現代の科学技術にもつながっていることに気付く・・・。本校では、このような学習を目指している。
 学んだことが身近なことや未来へつながっていることを体感した子どもたちは、科学的なものの見方や考え方を身に付けると同時に、「科学が将来の自分にとってなくてはならないもの」といった「科学の有用性」を実感することができると考える。

 

2 取り組みの概要

(1) 「堀川」での体験を位置付けた環境の学習


5年生 ヨウサイを育てる実験

 学校のすぐそばを流れる地域素材である「堀川」を教材化した。
 堀川は、名古屋市の中心部を通り名古屋港へ注ぐ、延長16.2㎞の1級河川で、名古屋城築城のため開削された水路である。汚れた川というイメージもあるが、大正時代までは、満潮になるとカツオやイワシも上ってきたと言われている。
 「堀川」を素材とすることで、そこに生息する生き物と自然環境、流れる水の働き、物の溶け方や水溶液の性質など、様々な領域の単元の内容を関連付けて学習することができる。

また、全学年の学習に身近な堀川での体験を位置付けることにより、繰り返し観察したり実験したりすることができ、より実証的に自然環境を捉え、環境と生物との関わりについての理解を深めることができると考える。
例えば3年生は、堀川上流の黒川と学校近くの堀川の生物を比較して、淡水と汽水の違いが生息する生物に影響していることに気付いた。5年生は、植物の成長条件の学習後、ヨウサイが塩分の多い堀川の水でも成長することから、生物の多様性に気付いた。6年生は、黒川に生息するマシジミが水を浄化する働きがあることを実験で確かめ、堀川 浄化に利用できるのではないかという考えをもった。

 このように、全学年が堀川を観察した結果、チチュウカイミドリガニ、クロベンケイガニ、フジツボ、ゴカイ、フナムシなど海や汽水域に生息する多くの生物の発見があり、それらの教材化を図っている。

 

(2) 「乗れる車」体験を位置付けたエネルギーの学習


人が乗れる車の試作

 身近な生活との結び付きが強い「車」を、全学年共通の素材として取り上げ、異なる動力で動かすという体験を通して、系統的なつながりをもたせたいと考えた。
 右の写真は、人が乗れる車の試作の様子である。人が乗っても、乾電池、ゴム動力、風の力といった様々な力で動く車である。エネルギーを体感させたいと他校の教員とともに作り上げた。どの学校でも製作できるよう、加工しやすい木材のボディーで、部品は近くのホームセンターで購入できるものを使った。
 小型模型の車を走らせる体験をした子どもたちは、さらに、自分たちが乗れる大型の車を、どのようにしたら走らせることができるかを考える。例えば、4年生では電池の数を増やし、直列つなぎや並列つなぎにして、より速く長い時間動く車作りに挑戦する。6年生では発電、蓄電の学習から、自分たちで作った電気で車を動かす実験をする。「自分たちが乗れる車を作って動かしたい」という願いを学習内容を活用して実現する体験は、エネルギー概念を獲得させ、科学の有用性をも実感させることができると考える。

 

3 おわりに

 乗れる車の試作に至るまでには、文章に表せない苦労があった。しかし、製作の過程で教師1人1人が学んだことは大変多い。教師も子どもたちも楽しみながら教材と向き合い、科学の有用性まで感じられるような実践を目指し、取り組みを進めていきたい。

(文・写真 石井鈴一)

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