いのちのつながりを感じて -ビオトープの再生を通して-
-豊田市立寿恵野小学校-
1 環境学習の中心となるビオトープの誕生
校庭に広がるビオトープ
本校は、豊田市南西部、矢作川の右岸に位置し、明治6年創立の伝統校である。史跡や水田、畑も多く、自然環境に恵まれた学区であるが、国道248号線に隣接し、間近に伊勢湾岸道も通っている。急速に発展した豊田市を象徴するような学区でもある。
子どもたちの1番の自慢は、学校ビオトープである。平成12年に、ビオトープが地域の方々の支援で造成された。地下60メートルからくみ上げられる地下水のお陰で、オイカワの群れに遠慮気味にメダカやモロコ、ホトケドジョウが遊び、水辺の植栽が考えられた理想的なビオトープが完成した。2年後、校務主任として勤務していた頃には、2枚の水田と水車小屋、3つの池、70メートルの小川とウッドチップを敷いた遊歩道を持つ、規模の大きなビオトープとなり、地域の方々も散歩に訪れる憩いの場となった。
2 ビオトープの再生
調査に力を入れる子どもたち
再度赴任した本校では、時の流れとともに、ビオトープを、水や生き物に触れる「遊び場」のように捉えるようになってしまっていた。生き物の住みかであった草地は裸地となり、池や小川にはザリガニがあふれ、生物種の少ない荒れたビオトープに変わっていた。
そこで、平成21年、立ち上がったのが、子どもたちの手による「ビオトープの再生=寿恵野の森ビオトープ」の取り組みであった。
まず、ビオトープを中心とした環境学習を、総合的な学習の時間や生活科、理科の学習に位置付けた。幸いなことに、ビオトープを活用した環境学習に堪能な教師がいたので、4年生を中心に全校を巻き込んでいく形で取り組んだ。
4年生の子どもたちは、「寿恵野の豆博士」を目標に、樹木班、野鳥班、水生生物班、蝶班、家下川クリーン班に分かれ、調べ学習や観察活動を行った。調べた結果は、随時写真やまとめ等の掲示やたよりを使って児童や保護者に知らせ、ビオトープへの関心を高めていった。時には保護者にも参加を促し、ドングリの煮汁を使って染めるハンカチを作ったり、専門家を招いて自然観察会を行ったりした。その中で、準絶滅危惧種であるサクラバハンノキを見付けたり、多くの野鳥や昆虫を見付けたりして、子どもも保護者も豊かな自然を実感し、関心を高めることにつながった。
それと並行してビオトープの整備を行った。伸び過ぎた樹木の間伐と枝切りを地域の方々の協力を得て実施した。日が十分差すようになったビオトープには、下草が生育し花を付け、様々な昆虫や野鳥が集まり、生き物のあふれるにぎやかな場所になった。
2年目に入ってさらに活動を広げるために、「ビオトープ部」を発足させた。自然に触れたい、生き物大好きという子どもたちの意欲を学年を超えて保障したいという思いからである。多くの子どもたちが名乗りを上げ、いよいよ子どもたちの手による再生が本格化し、観察のための橋を作ったり、池の泥を取り除いたり、「いのちのつながり」を意識した活動が精力的に行われるようになった。
3 地域の財産に
全校・地域への情報発信 「木の名前を覚えてね」
3年目には、再生の過程が認められ、「全国学校ビオトープコンクール環境大臣賞」をいただいた。地域の方々に大変喜ばれ、活動の大切さを理解していただくことができた。
今後、地域の財産として、支えていただけることを期待している。
(文・写真 榊原 昌子)