体験活動を重視した「いきもの環境学習」
-知立市立知立南小学校-
1 はじめに
7月に入った頃、6年生の数名が「校長先生、校舎の壁にツバメの巣を作ってもいいですか」と、突然聞きに来た。その理由を聞いてみると、「ツバメの巣が田んぼの土で作れるのかを確かめたい」とのことだった。
このように、子どもたちが実物に触れながら、主体的に取り組めるような学習を展開したいと考えた。
そこで、子どもたちの関心が高く、ふれあうことのできる動植物を取り上げ、体験活動を重視することで、それに迫ろうと考えた。
2 取り組みの概要
ダンゴムシを探す2年生
(1)いきもの教材の活用
子どもたちの関心や、学年の発達段階、他教科との関連等を考えて、身近な動植物を取り上げ、命を大切にする気持ちを高められるような単元となるようにした。特別支援学級は野菜、1年生は種、2年生はダンゴムシ、3年生はトンボ、4年生はミミズ、5年生は田にすむいきもの、6年生はツバメを教材とした。
(2)体験活動を生かした探究的な学習過程
意見の交換
子どもたち自らが課題を見つけて、追究したことを整理し、まとめて生かしていくという問題解決的な活動が繰り返される探究的な学習を大切にして、単元を構想した。
その中に、飼育や栽培活動を通した「継続的な観察」や課題を解決するための「確かめの実験」、調べたことが事実かどうかを確かめる「情報の確認」といった体験活動を位置付けるようにした。
(3)コミュニケーション活動の推進
子どもたちが体験したことや収集した情報をまとめたり、子ども同士で伝え合ったりすることで学びを深めていってほしいと考え、コミュニケーション能力の向上を図ることにした。
そこで、「聴くこと」「話すこと」「話し合うこと」それぞれの目標を設定し、それに迫るために、子ども同士が関わるCSU(コミュニケーション・スキル・アップ)活動を取り入れた。
CSU活動は、月に1度、強調週間を設け、強化すべき目標の達成に向けて、振り返りカードなどの手立てを考えて取り組んだ。
3 取り組みの実際
「ヤゴは何を食べているのかな」
3年生では、ヤゴが学校のプールで容易に採取できること、また、ヤゴは肉食性でもあることから、飼育や観察を通して、ヤゴを中心とした「食べる・食べられる」といった生態系の基礎を学ぶことができる教材として、トンボを取り上げることにした。
子どもたちは、ヤゴの飼育や観察を通して、「ヤゴのえさは何か」、「ヤゴを羽化させて、トンボにするにはどのように飼育すればよいか」という課題を見つけた。
その課題を追究する中でヤゴを飼育する方法を知り、ヤゴを中心とする生き物の「食べる・食べられる」といった関係に気付いていった。
さらに、トンボが卵を産みやすい環境を整えようと、かごに枝や草などを入れた浮島をプールに浮かべた。
そんなある日、プールの浮島にギンヤンマが卵を産み付けているのを見た子どもたちは、自分たちが育てたギンヤンマが帰ってきたと思い、大喜びした。
また、コミュニケーション活動を推進するに当たり、次のような目標を立て、CSU活動に取り組んだ。
【聴くこと】 | |
・ | 話のつながりや事柄の関係を考えながら聞く。 |
【話すこと】 | |
・ | 情報を取り出して話す。 |
・ | 理由を整理して話す。 |
【話し合うこと】 | |
・ | 基本的な話し合いの進め方を知り、司会を立てて話し合う。 |
4 おわりに
いきもの教材を取り上げることで、いきものと直接ふれあうことができ、子どもたちが主体的に取り組む姿を多く目にするようになってきた。今後も、自分から自然や周りにはたらきかけられるような子を目指していきたい。
(文・写真 杉浦 邦章)