生徒の実態に即した基礎・基本を身に付けさせる指導
-自ら学び、高め合おうとするコミュニケーション活動を通して-
-南知多町立篠島中学校-
1 はじめに
上空から見た篠島(背景後方は日間賀島)
本校は、知多半島の南端、師崎港から約4キロメートル離れた篠島にある。教室から万葉集にも詠まれた松島が一望できるなど風光明媚な自然環境の中にあり、歴史や文化に奥深さをもつ。鎌倉時代より伊勢との繋がりが強く、伊勢神宮式年遷宮の折に下賜される建材で造られた神明社や八王子社が島内にある。現在も干鯛を伊勢神宮に奉納する御幣鯛(おんべだい)奉納祭が行われる。天照大御神に仕えることを意味する「太一御用」と書かれた旗を掲げた漁船が伊勢湾を渡り、奉納している。
本校は、へき地1級地で、県へき地教育研究協議会より「学習指導の創意工夫」の研究委嘱を受けている。この委嘱を学校経営に生かす絶好の機会ととらえ、「賢く心豊かにたくましく働く篠中生」を合言葉に、子どもたちのよりよい成長と教職員の資質向上のために様々な教育活動を展開している。
2 取り組みの概要
島の宝である本校の子どもたちは、明るく純真で勤労をいとわず、優しさや思いやりがある。反面、自分の意見をもったり、それを人に伝えたりすることを苦手とし、内向的な一面が見られる。これは、1学年20人前後の小集団の中で生活しており、周りの大人を含めて、言葉によるコミュニケーションがなくても互いに意思疎通ができる環境で育ったためと考えられる。
このような実態を踏まえ、コミュニケーション活動を通して、自ら学び、高め合う力を育成することで、確実な基礎基本の定着を目指している。
具体的には、国語科の授業を通した話型の学習や、自分の考えを互いに意見交換するための意図的に編制した小グループでの発表や話し合いなどをコミュニケーション活動ととらえて取り組んでいる。
また、小中学校が隣接する立地条件を生かし、義務教育9か年を見通した小中学校の連携を一層強め、地域の願いである「将来の島を担っていく子どもたち」を育てていかなければと考えている。
3 取り組みの実際
(1)基礎基本の徹底
意思表示カードの活用
一人1授業研究で、互いの授業を見合い、参観後には、建設的な意見交換をして、研究協議会の充実を図っている。指導過程に、発表や話し合いの場の設定や発問の工夫、意思表示カードの活用等を入れている。その結果、意見の言えない生徒が話し合いに参加できたり、リーダー性を発揮する生徒が出現したりした。
少人数のよさを生かすTT指導(数学科)では、2人の教員で担当する以上、2倍を超える効果を求めて実践している。また、定期テスト時には基礎基本の30点保障問題を提示したり、長期休業中等に学力補充に取り組んだりして基礎学力向上に努めている。
(2)小中連携の推進
地震大津波避難訓練、島内清掃活動、外国語活動などでの合同授業、中学生がミニ先生となる算数科の授業(夏季休業等)、兼務発令による音楽科と技術科との交換授業等に取り組んでいる。小中連携では、教職員の親睦から始まり、様々な活動をする中で小中学校の接続がスムーズになり、中1ギャップが解消し、現在、不登校者数は小中学校ともにゼロとなっている。
4 おわりに
小中連携ハッスルあいさつ運動
他校に自慢できるような特別な実践ではないが、基礎学力の水準の引き上げには、手応えを感じている。
しかし、離島勤務3年を原則とする中での若手教員の育成、総合的な学習の時間の削減による島の特性を生かした教育活動の縮小など問題は山積している。島民は強い絆で結ばれ、失われつつある地域のよさが残っている環境を生かし、高校進学の全員の要望に応えると同時に、へき地学校から光を発信していきたい。
(文・写真 堀田 正敏)