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特色ある学校経営

環境学習を基軸としたESDの取り組み

-岡崎市立新香山中学校-

はじめに

 本校は、岡崎市の北部、村積山の麓に位置し、学区は豊かな自然に恵まれつつも住宅地開発や高速道路建設が進んでいる。昨年度開校30周年を迎えた市内では比較的新しい学校である。

 

環境学習の展開とESD


開校30周年記念体育大会

 本校の研究は、生徒が保護活動をしているササユリのように、これまで種をまき、葉をつけ、順調に育ってきた。
 岡崎市では、平成22年に岡崎市環境学習プログラムが導入された。本校も、この環境学習プログラムに沿って、環境教育を進める中で、持続可能な社会づくりに関わる課題を見出し、それらを解決するために必要な能力や態度を身に付けることを目標に研究を推進してきた。日々の授業実践では、学ぶべき内容を国立教育政策研究所の示した6つの構成概念と関わらせてキーワード化したり、プログラムの身に付けたい力とESDの7つの能力・態度の共有化を図ったりしながら、環境を主眼に置いた探究学習を進めてきた。

 

【1年生の学習】


共生社会を考える1年生の授業

 1年生は、「獣害」をテーマにして生き物と人間の共生を考える学習を行っている。新香山の校区では、近年サルやイノシシが人の居住区域で田畑を荒らしたり、学校で保護活動を進めているササユリの花根を食べたりする獣害が起きている。この問題をバイオリージョンマップの製作活動から焦点化し、共生社会の在り方を考える学習を展開した。生徒たちは、「外来生物は駆除すべきか」「希少生物は保護すべきか」という課題で討論を行い、関わり合いの中で価値観を深めている。話し合いを構想する中で教師は、ESDの視点や能力・態度、留意点を相関表にして人や動物の立場を明らかにしたり、未来の地域をイメージする手立てを講じたりした。このように、生徒が身近な自然の恩恵を実感し、「感受性」を磨くことができるように探究学習を構想している。1年生が毎年行っていたササユリ保護地区の下草刈りも生態系の維持という動機が生まれ、生徒の活動への意欲が増した。

【2・3年生の学習】

 2・3年生は、自らエコ活動を進め、持続可能な社会を考える学習を行っている。その中で、生徒の問題意識を高めるために「環境家計簿」を取り上げ、一人一人の排出する二酸化炭素の量を測定する活動を取り入れたり、「新エネルギー」や「地球温暖化」に関するニュースを提示し、生徒の問題意識を高めるための討論会を設けたりして、「自分事」として追究に取り組めるよう構想している。教師の手立てもよりダイナミックになり、教科横断的に道徳や理科の授業が展開されたり、生徒会活動や学校行事にもESDの視点が盛り込まれたりするようになってきている。
 3年間の環境学習を通して、ESDのキーワードは「探究」であることが実感できる。さ らに、学びが深まるにつれて「世代を越えた倫理観」を学ぶ道徳的な授業の必要性が高まってきた。また、私たちは、この実践を通して、学びのキーワードを「つながり」とした。さらに今後は、生徒の行動化のキーワードを「つづける」としている。
 未来志向の学習であるが、生徒の生活と行動は「すぐ先の未来」である。生徒の日頃の行動こそESDの検証場面であると考えている。
 例えば、いちばん近い未来の人を意識した行動として、校内のトイレのスリッパをそろえてフラッグをあげようという取り組みも実施している。

 

おわりに


100回を超えたトイレフラッグ

 岡崎市環境学習プログラムでは、「大切なのは答えを教えることではなく、考え方を身に付けることである」とされている。その理念を踏まえ、よりESD的な発想と手法によって、「未来志向の生き方学習」として確立できるよう、今後も研究を重ねていきたい。

(文・写真 杉田吉男)

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