自ら学びをすすめ よく考える生徒の育成
~ 「学び合う学び」の授業と心通い合う人間関係づくりを通して~
-小牧市立桃陵中学校-
1 はじめに
本校は、「学習指導」の研究委嘱を小牧市教育委員会(平成23~25年度)並びに愛日地方教育事務協議会(平成24・25年度)から受けた。本校では研究を進めるに当たり、全職員が次のよ うな気持ちをもって子どもたちを育てていこうと共通理解を図った。「子どもの良さを伸ばそう」「子どもの心の声を聴こう」「子どものために惜しみなく働こう」。そして、「生涯にわたって学び続ける人を育てよう」という思いを込めて研究主題を「自ら学びをすすめ よく考える生徒の育成~『学び合う学び』の授業と心通い合う人間関係づくりを通して~」とした。
2 取り組みの概要
朝の「あいさつ運動」
学習指導を研究の柱としたのは、授業が学校生活の中心だからである。本校の考える授業とは、教師主導ではなく、学ぶことにやる気や興味をもち、友達の意見に耳を傾け、共に考えたり調べたりするような、生徒を主役とした授業である。このような授業を実現するために、まずはじめに取り組んだことは、授業の基盤となる生徒同士、生徒と教師、教師同士の温かな人間関係づくりであった。登校時には気持ちよく一日のスタートができるように、下校時には充実した一日が過ごせたことを実感できるように、多くの教師が声かけや挨拶に努めた。また、生徒も様々な工夫をして学校行事を心の通い合うものにしていった。その結果、学校全体が落ち着き、しっとりとした雰囲気になってきた。
研究授業の事前検討会
「学び合う学び」の授業に関しては、全ての教師が全ての教科でその目標や特性を踏まえ取り組んだ。学び合う機会を日常化することで、仲間を頼り相談し、あきらめずに考えようとする姿勢が自然に身に付いていくと考えた。授業力の向上に関する研修では、研究授業の事前検討会や研究協議を計画的に行い授業の質を高め、「桃陵中学校の学び」を一人一人の教師が自分の言葉で語り、実践できることを目指した。
3 取り組みの実際
小牧市では全小中学校が「学び合う学び」の授業に取り組んでいるが、他の市町ではまだ一般的でない。「学び合う学び」について限られた紙面では十分に説明ができないので、詳しいことが知りたい方は、「学びの共同体研究会」のホームページをご覧いただきたい。
本校の授業では、まずはじめに生徒が意欲をもち「どうしてなんだろう」「知りたい」と感じさせる導入の工夫をしている。例えば1年生の社会科「日本の農業の将来について考える」の授業では、導入で生徒に日本、タイ、カリフォルニアの米を観察させたり、食べ比べさせたりして関心を高めた。
4人グループによる話し合い
さらに、学習課題に対しては、「独りではどうしていいか分からないが、仲間と相談しながら考えれば解決できそうな課題」を1時間の授業の中に設定した。子どもたちは、まず4人グループで分からないことを共有し、全員が分かるまで一生懸命考える。そして、グループで解決できなかったことをクラス全体で共有する。分からないことを交流し、知恵を絞って一緒に考えることを繰り返すことにより、みんなで学ぶ楽しさや、あきらめないことの大切さを身に付けることができるようになってきた。
年度末に生徒に行ったアンケートでは、9割以上の生徒が「学び合う学び」の授業を楽しいと感じていることが分かった。また、多くの生徒が学力が付いたとも答えている。このような生徒の反応は、「難しい課題をみんなであきらめずに考える」習慣が、毎日の積み重ねで付いたからだと考えることができる。
4 おわりに
論語に「その事について知識があっても、その事を好きな人には及ぶまい。もっと言うなら、その事を好きであっても、その事を楽しんでいる人には及ばないものである」という言葉がある。このように、生徒と教師が共に楽しく学び続けることのできる学校を目指し、今後も研究を続けていきたい。
(文・写真 山田好広)