外国人児童と共に生きる ~日本語取り出し支援を通して~
-碧南市立鷲塚小学校-
1 自然豊かな環境と宅地化
本学区は碧南市の北東の端に位置し、東は矢作川を挟んで西尾市と接し、北は県下第二の湖「油ヶ淵」に面し、安城市と境をなしている。明治6年に「義校」として開校以来、140年を越える伝統を誇る学校である。正門横のクスノキは樹齢100年を越え、校内には100種以上の木々が繁り、緑豊かな環境をつくっている。この地は、鷲林の地名が残るようにかつては木々が多く、稲作や畑作を中心とした純農村地帯であった。臨海部の工業地帯の造成に伴い、県営住宅や企業の社宅の建設もあり、宅地化が進んだ。他地区からの転入者も増え、外国籍の児童数も増えた。
2 外国籍児童への対応
日本語取り出し支援
平成元年12月に「出入国管理及び難民認定法」が改定されてから多くの外国人が来日するようになり、本校においても外国籍児童が増えた。毎年50人前後の外国籍児童が学んでおり、日本語教育が必要な児童数は全体の7パーセントを占める。外国籍児童が日本で生活をし、日本の学校で学んでいくためには、まず日本語の習得が必要となる。さらに、日本の文化や道徳、習慣などの十分な理解も必要である。そのために5段階に工夫した取り出しによる支援を実施している。
- 「サバイバル日本語」では、挨拶や体調を伝える言葉の他、身の回りの物の名前や出来事等を習得させる。
- 「日本語基礎」では、発音練習、文字・表記の習得、語彙の増加、基本文型を習得させる。
- 「技能別日本語」では、聞く・話す・読む・書くの活動をする。特に文章を書いたり読み取ったりする力を育てる。
- 「日本語と教科の統合学習」では、教科学習の内容を理解させる。
- 「教科の補習」では、在籍学級での学習内容を先行して学習したり、復習したりする。
取り出し支援では2、3人の児童に分けて個別指導をしている。児童一人一人の個人ファイルを作成し、学習計画に従って学習進度表もつくっている。日本語教室での取り出し支援では、伸び伸びと学習できる児童でも、学級に戻ると発言どころか挙手もしなくなる児童がいる。そんな場合は担任と連携をとりながら、ティームティーチングをする。日本語担当教員が学級での外国籍児童に寄り添うことで、安心して授業に向き合えるようにするための支援である。
県教育委員会視察
3 国語との統合授業
昨年12月、愛知県教育委員会の教育委員現地視察を受け、実際の授業を参観していただく機会を得た。異学年10名の児童が紅白組に分かれ、21組の反対言葉を言い当てるゲーム的な授業である。低学年児童は無邪気に熱中し、高学年児童は低学年を支援しながら落ち着いて授業に取り組むことができた。佐藤委員長からは、「これからもこのような細かな配慮のある指導が、県下のどこの学校においても展開されることが大切です」とご高評をいただくことができた。
ポスターセッション
4 これからの日本語指導
当初、言葉の壁が心の壁となり、学校生活になかなかなじめない外国籍児童もいた。しかし、日本語担当教諭による取り出し支援や、担任の深い愛情と努力で児童やその保護者に、学校の誠意を伝えることができた。外国籍児童の数は依然横ばい状態であるが、国籍の内訳は南米中心からフィリピン、中国、インドネシアなど多国籍化が進んできている。そのため、通訳としての日本語協力員の増員や教材の開発が必要となる。また、外国籍児童の中にも学習障害を抱える児童がいることも想定され、特別支援教育との連携も密にする必要がある。日本の多文化共生社会がますます進む中、本校では国際理解教育の一環として、校区内の保護者・地域の方々とともに、外国籍児童への温かい支援と相互扶助の精神をこれからも育てていきたいと思っている。
(文・写真 中根 孝明)