伝え合い、かかわり合い、深め合うことができる子の育成
-豊橋市立嵩山小学校-
1 はじめに
本校は、全校児童82人という豊橋市の中でも小規模校である。豊かな自然環境にも恵まれ、長年にわたりゲンジボタルの人工飼育活動や、農・地域資源を中心とした体験活動を積極的に進めてきている。地域の方々の学校に対しての協力も多く、教育活動をしていくには恵まれている。
そんな中、豊橋市教育委員会から研究委嘱(平成26~28年度)を受けた。そこで1人1台のタブレット端末を活用した授業並びに体験活動を、研究主題に基づいて実践に取り組むことにした。
2 取組の概要
問題解決的な学習を進めていく中で、効果的な学習を展開するために、タブレット端末等のICT機器活用を工夫すれば、子どもたちは学習への関心・意欲が高まり、互いの考えを広げ、伝え合い、かかわり合い、深め合っていくことができると考え、授業実践を進めた。
タブレット端末から自分の考えを発表
ICT機器等の特性(直観性・携帯性・連動性・即時性・再現性・協働性)を6つの特性分類と定義し、タブレット端末並びにICT機器の機能を利用し、次のような授業効果の現れる適切な活用をしている。
- 意欲化・焦点化を図る活用
- かかわり合いの場面を仕組む活用
- 調査・取材・まとめ・発信における活用
全ての教師が、子どもたちの意見を大切に広げ、深め合うことができるように、ICT機器の特性を理解して取り組んだ。
そして多くの研究授業に取り組み、事前検討会やプレ授業を定期的に行い、研究協議も十分に積み重ねた。
3 取組の様子
3年生の理科「ゴムや風のパワーを探ろう」では、効率のよい帆が遠くまで進むことを理解するために、タブレット端末や大型テレビを活用し、少人数を生かして、全員の予想や実験結果、考察を確かめた。細長いいけすに自作の発砲スチロールで作製した船を浮かべて実験をした。風を「マーキング機能」で可視化でき、分かりやすい説明をするなど、個々の考えたことを効率よく発表することができ た。
自作の農産地の地図でグループの話し合い
5年生の社会「わたしたちの生活と食料生産」では、農産物の産地に関心をもち、地形や気候等の関連をもとに学習課題を追究していく授業を展開した。タブレット端末にある「コラボノート」の白地図に調べたことを書き込み、その後、それをもとに気付いたことや疑問に思うことをグループで話し合った。このことが、今後の学習課題を決めていく契機になり、自作の資料であることも、学習への意欲づけに効果が見られた。
また、各学年の授業や総合的な学習の時間でも、年間を通して地域の自然・農に学ぶ実践を継続している。
4年生が核となりゲンジボタルの人工飼育活動をし、幼虫の放流式を全校で行っている。また、全校で汗して農に学ぶ体験学習を重視し、里山の恵みやよさを体感し、地域が抱える諸問題を見つけ追究している。自然の豊かな地域に誇りをもつようになり、真の学習が確立し、子どもたちの心に残る学習ができている。
「大きくなれ」と願いを込めたホタルの幼虫放流
4 おわりに
少人数と豊かな自然をもつ学校の特色を生かし、問題解決的な学習を進めていく中で、タブレット端末を中心としたICT機器活用を工夫した。少しずつではあるが子どもたちの目も輝き、授業へ積極的な取組が見られるようになった。また学習への関心・意欲が高まり、広く交流し合い、自分の考えも深めていくことができつつある。
今後も、十分なICT環境と豊かな地域資源を大切にして、広く深まりのある教育活動の実践に努めていきたい。